守口市議会 令和2年6月
「ごみ屋敷条例」の制定について
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水原
次に、いわゆる「ごみ屋敷条例」の制定について伺います。
不要と思われる物品を大量に溜め込むいわゆる「ごみ屋敷」や樹木の過度の繁茂、猫等の多頭飼育・給餌といった住居の荒廃は、衛生、環境、防災・防犯、景観をはじめとした様々な点から周辺地域に大きな悪影響をもたらすものであり、昨今、全国的に問題視されています。
この「住居荒廃」問題の解決を難しくしている大きな理由として、そこに居住する方がおられる中で、住居内への立入や行政代執行のような強制的措置を講ずるにあたっては、基本的人権の侵害が大きな問題となることが挙げられます。
たとえ近隣の衛生や防災・防犯、交通等に悪影響が生じているとしても、行政等が「ごみ屋敷」に置かれた大量の不要物の撤去や近隣住宅・道路にはみ出す樹木を伐採することは財産権の侵害になる場合がありますし、そもそも、市の職員や近隣住民等が住居に立ち入ることさえ、住居侵入罪等に該当する場合があるのです。
正当な根拠があればそのような事態は避けられるのですが、この点について大きな課題があります。
現行法上、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」「消防法」「道路法」「動物の愛護及び管理に関する法律」等の法令に不要物の撤去や樹木の伐採を可能とする条文は存在しているのですが、いずれも個別事案に適用しうるかどうかの判断が困難であったり、適用できたとしてもその対象が限定的であったりすることから、活用が進んでいないと仄聞しているところです。
このため、各法令に基づく強制的措置を意識しながら、荒廃した住宅の居住者の方と粘り強く交渉するよりほかになく、結果として長期間にわたり荒廃状態が続くことになってしまっている例も少なくありません。
そこで、まず、市内における「住宅荒廃」の現状について伺います。
次に「住宅荒廃」は先ほど申し上げた通り、周辺住民の生活環境等に大きな悪影響をもたらすものですが、一方で、それ以上にその住居に居住する方の生活環境を悪化させるものです。場合によっては、居住する方の健康や生命をも脅かす場合もあります。
人は誰しも快適な生活環境を好むものです。わざわざ好き好んで劣悪な環境に身を置くことはまずありません。荒廃した住宅に住まわれる方は、往々にして、深刻な課題を抱えているが故にそのような状況に至っています。
日本都市センターが2018年1月に実施した住居の荒廃をめぐるアンケート調査によれば、荒廃住居が発生する要因について全国814市区に照会したところ、居住者の方の「家族や地域からの孤立」「統合失調症やうつ病などの精神障害、精神疾患」「経済的困窮」「認知症」等が回答の上位となったと報告されています。
この調査結果が意味することは、法的権限に基づく強制的措置や行政・地域コミュニティ等による清掃への協力は、危険な状態を改善するためには有効ですが、居住者の方が抱える問題を解決しなければ再び「ごみ屋敷」をはじめとする「居住廃墟」が生じる恐れがあり、根本的な解決にはならない場合が多いということです。
このような問題を解決するためには、行政が福祉的な面からのアウトリーチ支援について、関係団体や地域コミュニティとも連携して、包括的・継続的に行うことが有効と考えます。
この点について、他都市の例を見てみましょう。大阪府内で住居荒廃に関連する条例を制定している自治体は、大阪市、寝屋川市、門真市、泉大津市の4市です。
豊中市では、条例こそ制定していないものの、豊中市社会福祉協議会が中心的な役割を担い、関係機関等が公民協同で「豊中市ライフセーフティネット」を構築、全国で初めてのCSW(コミュニティソーシャルワーカー)を配置し、「制度のはざま」の課題をはじめとする様々な地域課題の解決に取り組んでいます。
その中で、「ごみ屋敷」問題は、決して特異な事案ではなく、ライフセーフティの観点から、居住者の方や市をはじめとする関係機関、ボランティアの方々が連携してごみ処理を行う「福祉ごみ処理プロジェクト」に取り組んでいるとのことです。
豊中市における「ごみ屋敷」問題への取り組みについて、私が特に素晴らしいと考えるのは、地域に密着したCSWによるきめ細やかで継続的な支援と関係機関等が連携して課題を効果的に解決する「福祉ごみ処理プロジェクト」という2つの「仕組み」であり、そして、行政も地域住民も「ごみ屋敷」問題を「他人事」ではなく「我が事」として認識し、ともに解決に取り組む「姿勢」であります。
確かに「ごみ屋敷」問題をはじめとする荒廃住居の問題は解決が困難であります。
しかしながら、市や地域コミュニティ等が当事者意識を持ち、市内部の関係部署や外部関係機関、そして地域住民が緊密な連携体制を構築したうえで、居住者が抱える複合的な課題に包括的、継続的に取り組めば、適切な形で解決することができるのです。
守口市においても、「ごみ屋敷」をはじめとする荒廃住宅問題について、この豊中市の例も参考に、市の関係部署が外部関係機関や地域住民とも緊密に連携して、福祉的なアプローチからも課題解決に取り組むべきと考えますが、市の見解をお聞かせください。
併せて、福祉的な課題解決の取り組みを原則としつつも、近隣の衛生や防災・防犯、交通等に悪影響が生じている場合には、居住者の方や近隣住民の方々を保護するため、緊急の強制的措置を的確に行うことが可能となるよう、条例の整備に取り組むことも必要と考えますが、お考えをお聞かせください。
また、問題を未然に、或いは深刻化する前に解決するためには、住居荒廃、ごみ屋敷化の予防も重要です。市の関係部署、関係外部機関、地域コミュニティ等が連携し、ごみ屋敷かも知れない案件の早期発見と早期対応に取り組むことが必要と考えますが、この点についても市の見解を伺います。
以上で私の一般質問を終わらせて頂きます。ご清聴ありがとうございました。
不要と思われる物品を大量に溜め込むいわゆる「ごみ屋敷」や樹木の過度の繁茂、猫等の多頭飼育・給餌といった住居の荒廃は、衛生、環境、防災・防犯、景観をはじめとした様々な点から周辺地域に大きな悪影響をもたらすものであり、昨今、全国的に問題視されています。
この「住居荒廃」問題の解決を難しくしている大きな理由として、そこに居住する方がおられる中で、住居内への立入や行政代執行のような強制的措置を講ずるにあたっては、基本的人権の侵害が大きな問題となることが挙げられます。
たとえ近隣の衛生や防災・防犯、交通等に悪影響が生じているとしても、行政等が「ごみ屋敷」に置かれた大量の不要物の撤去や近隣住宅・道路にはみ出す樹木を伐採することは財産権の侵害になる場合がありますし、そもそも、市の職員や近隣住民等が住居に立ち入ることさえ、住居侵入罪等に該当する場合があるのです。
正当な根拠があればそのような事態は避けられるのですが、この点について大きな課題があります。
現行法上、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」「消防法」「道路法」「動物の愛護及び管理に関する法律」等の法令に不要物の撤去や樹木の伐採を可能とする条文は存在しているのですが、いずれも個別事案に適用しうるかどうかの判断が困難であったり、適用できたとしてもその対象が限定的であったりすることから、活用が進んでいないと仄聞しているところです。
このため、各法令に基づく強制的措置を意識しながら、荒廃した住宅の居住者の方と粘り強く交渉するよりほかになく、結果として長期間にわたり荒廃状態が続くことになってしまっている例も少なくありません。
そこで、まず、市内における「住宅荒廃」の現状について伺います。
次に「住宅荒廃」は先ほど申し上げた通り、周辺住民の生活環境等に大きな悪影響をもたらすものですが、一方で、それ以上にその住居に居住する方の生活環境を悪化させるものです。場合によっては、居住する方の健康や生命をも脅かす場合もあります。
人は誰しも快適な生活環境を好むものです。わざわざ好き好んで劣悪な環境に身を置くことはまずありません。荒廃した住宅に住まわれる方は、往々にして、深刻な課題を抱えているが故にそのような状況に至っています。
日本都市センターが2018年1月に実施した住居の荒廃をめぐるアンケート調査によれば、荒廃住居が発生する要因について全国814市区に照会したところ、居住者の方の「家族や地域からの孤立」「統合失調症やうつ病などの精神障害、精神疾患」「経済的困窮」「認知症」等が回答の上位となったと報告されています。
この調査結果が意味することは、法的権限に基づく強制的措置や行政・地域コミュニティ等による清掃への協力は、危険な状態を改善するためには有効ですが、居住者の方が抱える問題を解決しなければ再び「ごみ屋敷」をはじめとする「居住廃墟」が生じる恐れがあり、根本的な解決にはならない場合が多いということです。
このような問題を解決するためには、行政が福祉的な面からのアウトリーチ支援について、関係団体や地域コミュニティとも連携して、包括的・継続的に行うことが有効と考えます。
この点について、他都市の例を見てみましょう。大阪府内で住居荒廃に関連する条例を制定している自治体は、大阪市、寝屋川市、門真市、泉大津市の4市です。
豊中市では、条例こそ制定していないものの、豊中市社会福祉協議会が中心的な役割を担い、関係機関等が公民協同で「豊中市ライフセーフティネット」を構築、全国で初めてのCSW(コミュニティソーシャルワーカー)を配置し、「制度のはざま」の課題をはじめとする様々な地域課題の解決に取り組んでいます。
その中で、「ごみ屋敷」問題は、決して特異な事案ではなく、ライフセーフティの観点から、居住者の方や市をはじめとする関係機関、ボランティアの方々が連携してごみ処理を行う「福祉ごみ処理プロジェクト」に取り組んでいるとのことです。
豊中市における「ごみ屋敷」問題への取り組みについて、私が特に素晴らしいと考えるのは、地域に密着したCSWによるきめ細やかで継続的な支援と関係機関等が連携して課題を効果的に解決する「福祉ごみ処理プロジェクト」という2つの「仕組み」であり、そして、行政も地域住民も「ごみ屋敷」問題を「他人事」ではなく「我が事」として認識し、ともに解決に取り組む「姿勢」であります。
確かに「ごみ屋敷」問題をはじめとする荒廃住居の問題は解決が困難であります。
しかしながら、市や地域コミュニティ等が当事者意識を持ち、市内部の関係部署や外部関係機関、そして地域住民が緊密な連携体制を構築したうえで、居住者が抱える複合的な課題に包括的、継続的に取り組めば、適切な形で解決することができるのです。
守口市においても、「ごみ屋敷」をはじめとする荒廃住宅問題について、この豊中市の例も参考に、市の関係部署が外部関係機関や地域住民とも緊密に連携して、福祉的なアプローチからも課題解決に取り組むべきと考えますが、市の見解をお聞かせください。
併せて、福祉的な課題解決の取り組みを原則としつつも、近隣の衛生や防災・防犯、交通等に悪影響が生じている場合には、居住者の方や近隣住民の方々を保護するため、緊急の強制的措置を的確に行うことが可能となるよう、条例の整備に取り組むことも必要と考えますが、お考えをお聞かせください。
また、問題を未然に、或いは深刻化する前に解決するためには、住居荒廃、ごみ屋敷化の予防も重要です。市の関係部署、関係外部機関、地域コミュニティ等が連携し、ごみ屋敷かも知れない案件の早期発見と早期対応に取り組むことが必要と考えますが、この点についても市の見解を伺います。
以上で私の一般質問を終わらせて頂きます。ご清聴ありがとうございました。
答弁
周辺の生活環境の悪化や景観上に支障を及ぼす住宅荒廃の現状につきましては、様々な福祉サービスの機会や市民の皆さんからの通報等により、市内においても一定生じているものと認識しております。
こうした住宅荒廃の問題は、疾病や生活歴など居住者自身が抱えるさまざまな課題により生じるものが少なくないため、環境部局をはじめ、福祉部局や社会福祉協議会等の関係機関との連携を通じて、課題解決に努めているところです。
今後ともこうした連携をより密にし、粘り強く取り組むことで、いわゆる「ごみ屋敷」の解決に努めていくことが効果的かつ重要であると考えておりますので、命令や代執行など居住者への措置に関する条例制定につきましては、現在のところ考えておりません。
今後も民生委員、児童委員をはじめとする関係機関のお力も借り、「ごみ屋敷」等荒廃住宅の居住者が抱える生活課題の解決に向けても、福祉的側面から支援を行う一方、市内のパトロールも行い、案件の早期発見と早期対応に取り組んでまいります。
こうした住宅荒廃の問題は、疾病や生活歴など居住者自身が抱えるさまざまな課題により生じるものが少なくないため、環境部局をはじめ、福祉部局や社会福祉協議会等の関係機関との連携を通じて、課題解決に努めているところです。
今後ともこうした連携をより密にし、粘り強く取り組むことで、いわゆる「ごみ屋敷」の解決に努めていくことが効果的かつ重要であると考えておりますので、命令や代執行など居住者への措置に関する条例制定につきましては、現在のところ考えておりません。
今後も民生委員、児童委員をはじめとする関係機関のお力も借り、「ごみ屋敷」等荒廃住宅の居住者が抱える生活課題の解決に向けても、福祉的側面から支援を行う一方、市内のパトロールも行い、案件の早期発見と早期対応に取り組んでまいります。